Pent〈ペント〉 ボトルインク コトバノイロ トロッコ






企画・文章:文具ライター武田健
ぼくは最近富に旅は一人に限ると思っている。これはぼくが非常にわがままだからという理由もあるのだが、一人だとスケジュールも自由に組めるし、一日の行動も制限されることなく気ままに動くことができる。
2014年にパリに行った時も、一応せっかくパリに来たのだからという理由で、パリ中心部から鉄道で約1時間のヴェルサイユ宮殿にも遊びに行ったが、わざわざ電車に乗って行くほどの魅力がぼくにはまったく感じられず、ほとんどトンボ帰りでパリに戻って来てしまったのだ。 で、パリで何をしていたのかというと、山田詠美のパリを舞台にした短編小説に登場するカフェを探したり、クラブに行ったり(夜は一人で行く勇気がなくて、昼間に外観だけをチェックしただけだったのだが)、登場人物が歩いたブローニュの森を散策したりして一週間を過ごした。あとは、ひたすらぼくの好きな香水ブランドの本店に足しげく通って店員さんとおしゃべりを楽しんだ。 こんな旅に付き合ってくれる人なんて、まずいないというのはわかっているので、旅は一人と決めている。 さて、一人旅の醍醐味はいくつかあるが、見知らぬ土地を一人で好きなだけ歩き回れるというのもそのひとつだろう。
でも、まれに、誰か一緒にいたらいいなぁと心細く思うこともある。美しい風景を見た時に、すぐそばでその感動を共有する人がいたら、きっとその美しい風景もより美しく見えるだろう。あと、やはり知らない土地で何となく寂しい気持ちになることもある。その寂しさを紛らわしてくれるのも同行者に違いない。 旅先で、ぼくはしばしば芥川龍之介の「トロッコ」を思い浮かべることがある。
例えば、夕暮れ時。知らない町で、しかもたった一人でいると、それだけでも心細くなる。しかも周りの人たちは誰かと一緒に団らんを楽しんでいたり、わいわいと賑やかに過ごしていたりする様子を見ると、自分だけがこの世界でひとりぼっちなんじゃないかっていう妙な錯覚に陥ることがある。 そんな時にあの「トロッコ」で見知らぬ土地に運ばれた主人公の寂しい気持ちを思い出すのだ。 ヴェルサイユ宮殿に遊びに行ったのは、パリ滞在中の何日目かだったのだが、たった数日パリに滞在しただけで、すっかりパリの雰囲気が気に入り、パリジャン気分になってしまったぼくは、ヴェルサイユ宮殿からの帰り道でありありと「トロッコ」気分に浸っていた。 ひょんなことからトロッコを押して見知らぬ町まで来てしまった主人公の良平は、一人で今来た道を帰らなくてはならなくなる。
日暮れが迫る中、不安に駆られながら走って帰る良平の心が、異国の地でたった一人でいる自分には手に取るようにわかるのである。 コトバノイロで「トロッコ」を取り上げることになった時、ぼくの心に浮かんだのは、知らない町に行ってしまい、我に返った時の良平の不安な気持ちである。 グレーのような紫のような何色とひとことでは言えないような色は、良平の不安な気持ちを表している。 このインクは、だから一人で漠然と不安を感じている時などに自分の考えをまとめる際に使ってみるというのも良いだろう。 自分の不安に寄り添ってくれる、そんな色に仕上がったと思っている。
2014年にパリに行った時も、一応せっかくパリに来たのだからという理由で、パリ中心部から鉄道で約1時間のヴェルサイユ宮殿にも遊びに行ったが、わざわざ電車に乗って行くほどの魅力がぼくにはまったく感じられず、ほとんどトンボ帰りでパリに戻って来てしまったのだ。 で、パリで何をしていたのかというと、山田詠美のパリを舞台にした短編小説に登場するカフェを探したり、クラブに行ったり(夜は一人で行く勇気がなくて、昼間に外観だけをチェックしただけだったのだが)、登場人物が歩いたブローニュの森を散策したりして一週間を過ごした。あとは、ひたすらぼくの好きな香水ブランドの本店に足しげく通って店員さんとおしゃべりを楽しんだ。 こんな旅に付き合ってくれる人なんて、まずいないというのはわかっているので、旅は一人と決めている。 さて、一人旅の醍醐味はいくつかあるが、見知らぬ土地を一人で好きなだけ歩き回れるというのもそのひとつだろう。
でも、まれに、誰か一緒にいたらいいなぁと心細く思うこともある。美しい風景を見た時に、すぐそばでその感動を共有する人がいたら、きっとその美しい風景もより美しく見えるだろう。あと、やはり知らない土地で何となく寂しい気持ちになることもある。その寂しさを紛らわしてくれるのも同行者に違いない。 旅先で、ぼくはしばしば芥川龍之介の「トロッコ」を思い浮かべることがある。
例えば、夕暮れ時。知らない町で、しかもたった一人でいると、それだけでも心細くなる。しかも周りの人たちは誰かと一緒に団らんを楽しんでいたり、わいわいと賑やかに過ごしていたりする様子を見ると、自分だけがこの世界でひとりぼっちなんじゃないかっていう妙な錯覚に陥ることがある。 そんな時にあの「トロッコ」で見知らぬ土地に運ばれた主人公の寂しい気持ちを思い出すのだ。 ヴェルサイユ宮殿に遊びに行ったのは、パリ滞在中の何日目かだったのだが、たった数日パリに滞在しただけで、すっかりパリの雰囲気が気に入り、パリジャン気分になってしまったぼくは、ヴェルサイユ宮殿からの帰り道でありありと「トロッコ」気分に浸っていた。 ひょんなことからトロッコを押して見知らぬ町まで来てしまった主人公の良平は、一人で今来た道を帰らなくてはならなくなる。
日暮れが迫る中、不安に駆られながら走って帰る良平の心が、異国の地でたった一人でいる自分には手に取るようにわかるのである。 コトバノイロで「トロッコ」を取り上げることになった時、ぼくの心に浮かんだのは、知らない町に行ってしまい、我に返った時の良平の不安な気持ちである。 グレーのような紫のような何色とひとことでは言えないような色は、良平の不安な気持ちを表している。 このインクは、だから一人で漠然と不安を感じている時などに自分の考えをまとめる際に使ってみるというのも良いだろう。 自分の不安に寄り添ってくれる、そんな色に仕上がったと思っている。






この商品には以下のバリエーション(色・種類)があります。
消耗品・関連商品



商品名:SAILOR(セーラー万年筆) ボトルインクリザーバー 50ml角瓶専用 13-0500-000 インク吸入補助具
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加算ポイント:4ポイント




商品名:Pent〈ペント〉 by 藍濃道具屋(レンノンツールバー)ボトルインク 限定色 源氏物語
希望小売価格(税込):2,970円
販売価格(税込):2,970円
加算ポイント:27ポイント
ペンハウスデザイン(日本)
藍濃道具屋デザイン(台湾)












商品名:Pent〈ペント〉 インク吸入器アダプター ハミングバード
希望小売価格(税込):2,970円
販売価格(税込):2,970円
加算ポイント:27ポイント
A(ペリカン/モンブラン/他)
B(パイロットCON-70/CON-70N/ラミー)
C(プラチナ/Sheaffer)

